理学療法士に求められる能力

理学療法士はその仕事内容がまだ一般に十分認知されているとは言い難く、意思の補佐役として歩行訓練や徒手訓練を行うといった、いわば裏方とみられることもあります。

だが、実際には彼らは医師の指示を仰ぎつつそれぞれの患者にとって適切な治療法を考え、自らの手足や機器を使って訓練を行います。

また、意思は必ずしもリハビリに精通しているとは限らないため、理学療法士が主体となって患者の身体機能を観察し、適切な処置を判断することも少なくありません。

そのため、理学療法士には機能訓練を中心に、患者が日常生活に復帰できるまでを総合的にサポートする重責を担っていると言っても過言ではないでしょう。

理学療法士には何が求められているのか

理学療法士の仕事現場
では、その理学療法士には何ができると期待されるのでしょうか。

実際に現役として活躍中の方の仕事ぶりを見ながらこれについて考えてみたく思います。

「こんにちは。午前中の訓練で疲れませんでしたか?それではいつもの歩行訓練を始めましょう。」

とある病院のリハビリ病棟に、理学療法士Aさん(女性)の明るい声が響き渡ります。

ここには脳卒中の後遺症(半身まひや半側空間失認など)を抱え、自力での生活が難しい患者が生活しており、Aさんが本日手伝う方は脳梗塞の後遺症で半身まひの症状があり、注意力も鈍化しているといいます。

そのため、移動時に転倒などしないよう注意を払う必要があるのです。

まずはベッドから体を起してもらうが、その際も患者が転倒などしないようしっかりと支えつつ、しかも起居動作を全くAさんの力だけで行うことなく、本人にも努力させなくてはならなりません。

自ら体を動かさなければ、訓練にならないのですから。

但し、動作のアドヴァイスは極めて入念に行います。ただ「下半身に力を入れて」とか、「右に移動してください」などというのでなく、

「ちょっとずつ体を横向きにして下さい」「靴は左からはきましょう」「ベッドから上半身を起こして一旦姿勢を正して、それから車いすに座りましょう」

などと、微に入り細を穿つやり方で起き上がり動作の手順を説明していきます。

さて、車いすに移ってリハビリルームへ移動したら、歩行訓練が待っています。

右半身にまひのある患者はこちらの足の自由が効かないため、右足を動かす際はAさんが手で足をもって前に出すサポートを行います。

歩く最中にも転ばないよう患者の体をしっかり支える必要があります。

当然患者の中には恰幅の良い男性もおり、女性の膂力では支えられないのではないか、と見ている方は気をもんでしまいますが、そこは運動学で見に付けた歩行のコツと経験とを生かして自分の体を最大限に活用して乗り切るのだと話されています。

訓練の最後に、支えなしで短い距離を歩いてもらうのですが、Aさんは注意深く見守るとともに、改善や向上がみられるときは褒めることも忘れません。

「だんだん長い距離を歩くことができてきましたね。」

「動きがスムーズになってきていますよ。」

といった具合に。

創意工夫ができる柔軟な思考が不可欠

さて、ここまでAさんの活動を見てくると、理学療法士に必要とされるスキルや人間性がおのずと見えてくるのではないでしょうか。

まず相手の求めていることや悩みを察知し、それを解決するために手立てを準備できる能力。ひとくちに歩行が難しく、それを改善したいといっても、現在はどのくらい歩けるのか、最終的にどの程度まで回復したいのかといった詳細は相手によって千差万別であり、本人も自分の能力を十分理解していないことは少なからずあります。

そうしたなか、相手の求めるものは何か、それを満たすために自分には何ができるのかを見極め、提供しなくてはなりません。

創意工夫のできる柔軟な思考も不可欠です。

患者の容体や症状が千差万別である以上、通り一辺倒の、教科書で学んだ内容にいつまでもしがみついていては、適切な治療など望みえません。

むしろ、基本を押さえたうえで、もっとよい方法はないか、何か工夫できることはないか、と絶えず自問自答し、より適切な治療法を提案できることが期待されます。

さらに、これは看護師など他の医療従事者とも共通しますが、人と直接接するなかで治療を施す仕事である以上、他人の気持ちを理解し、思いやるといった、共感する力がなくてはなりません。

いかに卓越した技術をもっていたとしても、それを適切なときに適切な患者に向けて活用しなければ、まさしく宝の持ち腐れです。

もちろん、これは技術と異なり多分に人間性にかかわる能力であるため一朝一夕には身につかないが、教育や経験によって涵養することは可能でしょう。

これからの理学療法士には、こうした能力が求められるのです。

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